国税局は、バイオリンを『楽器』じゃないと言う!

バイオリンを『楽器』として法人税の申告を行ったある会社が、
国税局から『楽器』じゃないと言われて、20億円の申告漏れを指摘された、というニュースが流れました。
こう書くと国税局の言ってることが無茶苦茶に思えるんですが、
税金の世界では、国税局が正しいんです。
論点は、『経費』にできるかどうか。
まず税金を計算するための、基本的な知識を確認しておくと、
税金はざっくり次のように計算されます。
①利益 = 売上 ー 経費
②税額 = 利益 × 税率
経費が増えれば、利益が減って、税金は安くなります。
今回のニュースも同じですが、
税務調査でよく問題になるのが、『経費』にできるかどうか。
何でもかんでも『経費』にできるわけではなく、
『経費』にできるものは、税法で決まっています。
『楽器』なら経費にできる。
今回の事件は、明らかに会社側の間違いで、
会社もすでに修正に応じているとのことですが、
会社が当初行った処理は、
・バイオリンは、楽器
・楽器は、減価償却資産
・減価償却資産は、経費計上できる
※建物や車、機械など、高額で数年にわたって使用できて、
使用すれば、劣化していって徐々に価値がなくなっていくものは、
『減価償却資産』といって、数年にわたって経費に計上するルールが適用されます。
(例)車を120万円で購入。耐用年数は6年。
→毎年20万円ずつ経費計上する。
『楽器』ではなく、『美術品』。
単なる『楽器』なら問題なかったんですが、
今回、問題となったバイオリンは、『ストラディバリウス』でした。
300年も前に製作されたのに、
2011年には、最高12億円で取引されたこともある『楽器』です。
税法上、減価償却資産となる『楽器』であれば、
新品なら5年、中古なら2年で経費計上できることになっています。
『ストラディバリウス』は、もちろん中古ですよね。
今回の『ストラディバリウス』がいくらだったかはわかりませんが、
数千万円、数億円はしたのではないでしょうか。
会社が『ストラディバリウス』を購入してから
2年で価値がゼロになる…わけないですよね。
そのため、ストラディバリウスのような価値が減少しない
特殊な『楽器』については、
税法上は、『美術品』として扱われるんです。
『美術品』は、時間の経過とともに劣化して価値が減少するわけではないので、
『経費』にすることはできません。
国税局の指摘は・・・
・ストラディバリウスは『楽器』ではなく『美術品』
・美術品は、経費にできない
・経費が減ると、利益は増える
・利益が増えると税額も増える
・納めてた税金が20億円ほど足りないので納付してください
特殊なケースですが、
国税局は、バイオリンを楽器じゃないと言うこともあるんです。
まとめ
今回のケースは特殊でわかりやすいですが、
税金の世界には、税法で決められたルールがあるので、
日常の知識で判断すると、税法上は間違ってたってことがありえます。
税金の世界のルールを知らなくて損することがないようにしたいですね。