個人事業の経営判断にも影響する!?国民健康保険料の算定。
個人事業主の方の多くが
『国民健康保険』に加入されていると思います。
国民健康保険料って、どうやって計算するか知っていますか?
計算方法を知っていると、
個人事業の経営判断が違ってくるかもしれません。
【この記事の目標】
国民健康保険料の計算方法をざっくり理解する。
Q.国民健康保険料はいくら?
<条件>
夫(45歳)個人事業主
前年の事業所得500万円
妻(43歳)パート
前年の給与所得35万円(給与収入100万円-給与所得控除65万円)
子:中学生2人
1.国民健康保険料を算定する仕組みを理解する
①保険料は、3つに分類される。
・医療分保険料
・後期高齢者支援金分保険料
・介護分保険料
※介護保険料は、40歳から64歳までの人だけ計算します。
65歳以上になると、
介護保険料は国民健康保険料とは別に納めるので、
掛からなくなるわけではありません。
②保険料は、世帯単位で計算する
世帯ごとに計算するため、
夫が個人事業主、妻がパートの場合には、
2人の所得を合算することになります。
③算定のもととなるデータは、次の2つ。
・世帯の所得額
所得からは基礎控除33万円を差し引けます。
夫の所得:5,000,000-330,000=4,670,000
妻の所得:350,000-330,000=20,000
世帯所得:4,690,000
・世帯の人数
4人(介護分は40歳以上のため2人)
2.保険料率を調べる。
「○○市 国民健康保険料」と検索。
大阪府枚方市の場合(平成30年度)
保険料 | 所得割 | 均等割 | 平等割 |
医療分 | 世帯所得×7.98% | 20,660円×人数 | 24,870円 |
後期高齢者支援金分 | 世帯所得×3.03% | 7,870円×人数 | 9,480円 |
介護分 | 世帯所得×2.08% | 13,120円×人数 | - |
なぜ3つの要素にも分かれているかというと
所得割は、収入が多い人はそれだけ多く払えるだろう
均等割は、人数多ければ、人数に応じて負担してほしい
平等割は、すべての世帯で最低限の負担はしてほしい
といった考え方の組み合わせです。
人数割りだけだと、低所得者の負担が多くなり、
単純な所得比例だと、所得が同額の場合、人数が少ない人が負担を感じます。
これが最適とはかぎりませんが、税金も同じで
「公平」と「平等」のバランスを取るための配慮がされています。
3.保険料を算定する
今回は、世帯所得469万円、人数4人(介護分は2人)です。
①医療分
4,690,000円×7.98%+20,660円×4人+24,870円=481,700円
②後期高齢者支援金分
4,690,000円×3.03%+7,870円×4人+9,480円=183,000円
③介護分
4,690,000円×2.08%+13,120円×2人=123,700円
④国民健康保険料
①+②+③=788,400円
4.個人事業の経営判断への影響
国民健康保険料は、「事業所得」をもとに計算されます。
事業所得は、経費を多く計上するほど、少なくなります。
事業所得=売上―経費
平成30年度の保険料率は、約10%でした。
40歳未満11.01%
40歳以上13.09%
さらに、所得税率10%、住民税率10%を加えると、
40歳未満31.01%
40歳以上33.09%
ここで少しシミュレーションします。
年末近くになって、余裕資金10万円がある場合。
年を超えると、10万円は次のように変わります。
①何も購入しなかった場合
年を越すと、10万円の現金が67,000円に目減りしてしまいます。
手許現金 67,000円
税金など 33,000円
②備品10万円を経費計上した場合
年末に備品購入など経費計上すれば、
税金などの支払いがその分減ります。
手許現金 0円
備品 10万円(経費計上)
年を越す前に経費計上すれば、
実質3割引き(67,000円)で購入できたとも考えられます。
もちろん、経費をできるだけ計上すべきという意味ではありませんが
国民健康保険料の負担だけで考えても、10%安く購入できることになります。
5.限度額に要注意
国民健康保険料には、限度額があり、それぞれ
・医療分:54万円(481,700円)
・後期高齢者支援金分:19万円(183,000円)
・介護分:16万円(123,700円)
( )内の金額は、例題の計算結果。
各保険料とも限度額に近いです。
課税所得500万円を超えてくると家族構成によっては、
限度額を上回る場合があります。
限度額を大きく上回っていると、
多少、経費を計上しても、限度額を超えてしまうため、
保険料の減額効果はありません。
6.まとめ
国民健康保険料は、事業所得をもとに計算されます。
所得に比例する保険料は、所得の約10%
備品など購入するか否か、
10%引きの金額で考えるといいかもしれません。
ただし、国民健康保険料には、限度額があるので、
課税所得が500万円以上の方は、注意が必要です。