個人事業から法人化。利益400万円でも検討の余地あり。
法人化するかどうかを、得かどうかで判断することも多いと思います。
しかし、人によって条件が違うため、
所得〇〇万円以上なら、法人化した方が得!!と、即答することができません。
そこで今回は、
架空の人物・Aさん(35歳、独身)で試算を行ってみました。
※一部、計算を簡略化しています。
税率、保険料率は、2017.8.15現在の数値を使用しております。
料率改定などは、考慮しておりません。
また、単純化のため、
減価償却費など、現金の支出を伴わない経費はないものとします。
健康保険料は、前年所得を基にしますが、今期所得で計算しています。
介護保険料の計算を省くため、40歳未満の設定にしています。
以上の理由により、正確な数値ではありませんので、ご留意ください。
個人事業主の場合
利益:400万円
個人事業主のAさんは、今年度400万円の利益がでました。
従業員は雇っておらず、1人だけで事業をしています。
売上1000万円-経費600万円=利益400万円
事業所得:335万円
青色申告の特別控除を引くと、事業所得は335万円です。
利益400万円ー青色控除65万円=事業所得335万円
所得控除:98万円
Aさんは、独身で生命保険など加入していません。
したがって、所得控除は、社会保険料(健康保険・年金)のみです。
基礎控除38万円+社会保険料約60万円=所得控除98万円
所得税・住民税・事業税
上記より、各種税金は、441,800円
所得税 142,200円
住民税 244,600円
事業税 55,000円
手取り額 295万円
利益400万円から 社会保険料と各種税金(約105万円)を引くと
約295万円が手元に残りました。
法人化した場合
(法人)人件費控除前の利益は400万円
条件を同じにするため、
人件費(給与・社会保険料)を控除する前の利益を400万円とします。
(法人)人件費…年収342万円・社保会社負担 約48万円
Aさんは、社長ひとりで仕事をしていて、年収342万円を受け取っています。
また、法人化すると社会保険が強制加入となります。(協会けんぽで試算)
月額給与28万5千円の場合は、
約48万円が会社負担となり費用に計上されます。
(法人)税引前利益 約10万円
400万円から人件費を引くと 税引前利益は約10万円です。
400万円ー給与342万円ー法定福利費(社会保険)約48万円=約10万円
(法人)法人税等 約9万円
税引前利益10万円には、法人税等9万円が掛かります。
※法人の場合は、赤字でも均等割7万円が掛かります。
そのため、10万円の利益に対する税金が9万円と高くなっています。
Aさん手取り額 約273万円
法人化し会社から給与をもらうようになったAさん。
額面342万円に対する税金等は、次のようになります。
所得税 69,300円
住民税 143,600円
社会保険 約48万円
これらを引いた手取り額は約273万円です。
どっちが有利?
人件費を考慮する前の利益が400万円のAさん。
会社の負担も含めて考えると、
税金・社保負担額の差は年間約22万円と、あまり変わらない結果となりました。
表1.税金・社保負担額
個人事業主 | 法人化 | ||
法人負担 | 個人負担 | ||
所得税 | 142,200 | – | 69,300 |
住民税 | 244,600 | – | 143,600 |
個人事業税 | 55,000 | – | – |
健康保険料 | 403,400 | 305,400 | 305,400 |
年金 | 197,800 | 170,100 | 170,100 |
法人税等 | – | 93,000 | – |
計 | 1,043,000 | 568,500 | 688,400 |
1,256,900 |
手取り額
個人事業 295万円
法人化後 273万円
利益400万円で法人化なんて早いと思っておられる方も多いと思います。
しかし、法人にしかできない節税があることも考えると
早めに検討する価値がありそうです。
(参考:法人成りしたら検討したい借上社宅)
※一般的に個人より法人の方が申告業務が煩雑なため、
税理士の顧問料が高くなり、経費が増えることが予想されます。
法人化の検討は顧問税理士にご相談ください。
利益1000万円でも断言できない?
利益400万円だと、悩んでしまう結果だったので、
利益1,000万円でも試算してみました。
Aさん
35歳・独身・従業員なし
法人化後 年収 876万円
個人事業主 | 法人化 | ||
法人負担 | 個人負担 | ||
所得税 | 1,239,100 | – | 619,400 |
住民税 | 812,000 | – | 524,900 |
個人事業税 | 355,000 | – | – |
健康保険料 | 730,000 | 455,800 | 455,800 |
年金 | 197,800 | 676,300 | 676,300 |
法人税等 | – | 93,800 | – |
計 | 3,333,900 | 1,225,900 | 2,276,400 |
3,502,300 |
法人化した方が税金・社保の負担は17万円ほど多くなります。
手取り額
個人事業 666万円
法人化後 648万円
節税の効果(240万円→123万円)は大きいのですが、
社会保険料の負担が重たいです。
協会けんぽで試算していますが、
収入に応じて健康保険料の負担が重くなります。
業種によっては健康保険組合への加入により、
健康保険料を抑えることができるかもしれません。
まとめ
所得税は超過累進税率。
利益が多いほど、所得税負担が増えるため、
法人化により節税できます!
しかし、基本的に強制加入となる社会保険の負担が大きく、
節税のメリットを相殺してしまいます。
法人化を検討する場合には、
社会保険料の負担も含めて慎重に判断することが大切です。
—
大阪府枚方市の30代税理士なら多田税理士事務所